
一人で AI 短編は撮れるのか:絵コンテ・キャラクターの一貫性・カット繋ぎの実践的な答え
撮れます。ただし、全部ではありません。
あえて最小の物語で試しました。古いコートのポケットから折り畳まれたメモを見つける男の話です。8 カット、一人、一文から通して観られる状態まで。うまくいったこと、詰まったところ、そして実際にかかった手間を全部書きます。
一人で終えられる部分と、終えられない部分
期待を間違えたまま読み進めないよう、先に結論から。
いま一人で完結できること:絵コンテ、キャラクターの造形とキャラクターの一貫性、各カットの画、カット間の繋ぎ、声と口の同期。以前は撮影・照明・美術・俳優を必要とした仕事が、実際に机の上で収まるようになりました。
まだできないこと:5 秒を超える連続した複雑な動き、台詞の尺にぴったり合わせた演技、画面内に読める文字が入るカット(理由は後述)、そして実在のロケ地や生身の人間の反応が必要なもの。
つまり今の AI 短編に向いている尺は 30 秒から 2 分、短いカットを何本か繋いだ形です。3 分のワンカットは狙わないこと。これはプロンプトの書き方の問題ではなく、このやり方自体の現在の上限です。
文章をどうやって絵コンテにするか
絵コンテは AI 短編制作でいちばん先にやるべきで、いちばん安く済む工程です。速くて、ほとんど費用がかからず、本番の画に金を使う前に物語の穴を露出させてくれます。
やり方は単純です。物語を 1 カット 1 文に割り、各文に 3 つ書く —— サイズ、動き、光。それから AI 画像生成 で鉛筆調のサムネイルを一版出します。

私の 8 コマの割りはこうです。ロングで部屋を提示 → ミディアムでコートをハンガーから外す → 手がポケットに入るクローズアップ → 掌の上で開かれたメモのクローズアップ → ミディアムで顔を上げ窓の方を見る → ロングでコートを着てドアへ向かう → 階段のドアが朝の光の中へ開く → ロングショットで街へ去る後ろ姿。
この段階での直感に反する助言をひとつ。上手に描こうとしないこと。 確認するのは 3 点だけです。物語が通るか、サイズに変化があるか、余分なカットがないか。粗く描くほど、削る決断がしやすくなります。初版は 11 コマあり、8 コマまで削ってようやくリズムが合いました。
全カットで同じ顔を保つには?
キャラクターの一貫性は AI 短編がいちばん崩れるところで、私が最も時間を使った工程でもあります。
答えはキャラクターシートです。まず 1 枚作り、以降は顔を言葉で描写せず、毎カットそれを参照させます。一貫性は同じ参照画像を使い回すことで生まれるもので、描写を細かく書くことでは生まれません。

まず正面の綺麗な 1 枚を出しました。グレー背景、均一な光、素の顔、表情なし —— 要するにオーディション写真です。それを参照に四分の三、横顔、後ろを足します。この 4 枚がこの作品の「俳優」で、以降のカットには毎回このシートを渡します。
実務上の 3 点:
顔を文章で描写しないこと。「三十代半ば、短い黒髪、薄い無精髭」では百人の別人が出ます。顔は参照画像に任せ、プロンプトはそのカットで変える点だけを持たせます。
後ろ姿と横顔は先に出しておくこと。 去っていくカットに来てから生成すると、正面と同じ人物にならない確率が高いです。
服は毎回プロンプトに書くこと。 キャラクターの一貫性は顔だけではありません。コートの色や形が流れれば、観客はやはり繋がっていないと感じます。この 3 つが守れれば、AI 短編のキャラクターの一貫性はほぼ解決します。
カットはどう繋げば飛ばないか
いちばん労力の少ない方法は、前のカットの最終フレームをそのまま次のカットの最初のフレームにすることです。

上の 2 フレームは同じ一拍の前半と後半です。左は俯いてメモを見ているところ、右は顔を上げて窓の方を見たところ。構図も光の向きもグレーディングも動いていません。変わったのは頭の角度と視線だけ —— 繋げば一続きのリアクションになります。
この 2 枚を 最初と最後のフレームから動画生成 の開始点と終了点として渡し、間はモデルに埋めさせます。モデルに動作をまるごと「演じ」させるよりずっと安定し、両端を自分で固定しているのでキャラクターの一貫性も守りやすくなります。
繋ぎで見落とされがちな点が 2 つ。光の向きを揃えること。 前のカットで左から来た光が次で右から来てはいけません。観客は何が変なのか言えませんが、変だと感じます。グレーディングを揃えること。 私の 8 カットはすべてプロンプト自体に「明け方の寒色」を書き込みました。後工程で直す前提にしていません。
全カットを一度に見て、悪いものだけ直す方法
1 枚ずつ開いて見ると騙されます。単体ではどれも悪くないのに、並べて初めて 3 カット目の顔がずれていると気づきます。
私は 8 カットすべてを ジェネレーティブキャンバス に順番どおり一列に並べ、離れて見ます。キャラクターの一貫性の問題は一列にすると最も見つけやすい —— 顔の流れや光の違いが一目で出ます。この習慣だけで手戻りの大半が消えました。おかしい 1 マスだけ再生成すればよく、全体を作り直す必要はありません。

これが最終の 8 カットです。3 カット目の手は 2 回撮り直し、7 カット目の逆光は露出を 1 回調整しました。
音はどうするか
画はここで終わりますが、音のない AI 短編は 30 秒より先を持たせられません。
私の作品は台詞なしなので環境音だけです。台詞がある場合の順序は、AI 音声合成 で声を作る、または ボイスクローン で固定の声質を複製し、そのあと リップシンク で口を合わせる。
この順序を逆にしないこと。先に画を作ると、口の形と台詞の尺が合いません。先に音の長さを決め、それに合わせて画を生成すれば手戻りは大幅に減ります。音を最後に回すのは AI 短編制作で最も多い段取りミスです。
画を動かす限界はどこか

この 5 秒は上のカットから生成しました。呼吸、1 回のまばたき、視線が少し移る、眉がわずかに寄る。
「振り向いてドアへ歩く」を 3 回試しましたが、毎回崩れました。2 歩進むともう彼ではありません。キャラクターの一貫性は静止画より動画のほうがずっと脆いのです。境界は明快です。その場での小さなリアクションは信頼できる。移動や複雑な動作をさせるのはまだ無理。 移動が必要なカットは、モデルに演じさせるのではなく、最終フレームを先に作って補間します。
失敗した 3 点、正直に
画面内の文字は嘘です。 メモのクローズアップを拡大すると、紙の上の「手書き」は全部でたらめです。生成モデルは読める文字を書けません。はっきり写さない(ピントを外す、半分隠す)か、後から本物の文字を貼るか。現状もっとも硬い制約のひとつで、一群のカットが静かに不可能になります。
手は 1 つずつ確認が必要。 ポケットに手を入れるカットは、初版で指の関節の位置が違っていて、2 回撮り直しました。手が画面に入るカットは必ず拡大して見ます。
連続した動きは顔を失います。 前述のとおり、2〜3 秒を超える移動はほぼ崩れ、最初に失われるのがキャラクターの一貫性です。
そのまま使える 8 カットのリスト
この順で進めれば手戻りは出ません:
- 物語を 1 カット 1 文に割り、各文にサイズ・動き・光を入れる
- 粗い絵コンテを出し、必要なカットだけに削る
- キャラクターの一貫性を固定するシートを作る:正面 + 四分の三 + 横顔 + 後ろ
- コンテ順に 1 カットずつ生成し、毎回シートを渡し、グレーディングを全プロンプトに書く
- 繋ぐ箇所は最終フレームを先に、次に最初のフレームを作る
- すべてキャンバスに並べ、列で比較し、壊れたものだけ再生成する
- 音の長さを確定し、それに画を合わせる
- 手、耳、画面内の文字を 1 カットずつ拡大して確認する
8 カット全体で約 3 時間、その大半は生成待ちではなくプロンプトを書き、テイクを選ぶ時間でした。キャラクターの一貫性とカット繋ぎは、何度かやると倍近く速くなります。
この水準ならオープニング、コンセプト映像、提案用のサンプルには十分です。クライアントに納品する本編なら、いまも実写で撮り、AI で足りないカットを補う混成でやります。この工程を自分で試すなら、AI 動画生成 から始めれば十分 —— 必要なのは一文だけです。